iPS細胞とは何か、何ができるのか

近所の書店で類書を見ていて、この本が一番日付が新しく、かつ題名が直接的で中もわかりそうなのでこれを購入した。

素粒子加速器が、素粒子どうしをぶつけて宇宙の始まりビッグバン当初の環境を再現する「タイムマシーン」なら、

iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、人の皮膚などから、どのような細胞へも分化する「初期の細胞」へと「時間を逆戻す」ことによってできる。ES細胞と違って、生命の元になる胚を壊さなくていいから、倫理的な問題もクリアする。

山中教授のiPS細胞は、4つの山中ファクターという要素を細胞に入れて作られた。

いままでの治療で治らない病気はいろいろある。その病気それぞれに役立つようなiPS細胞を「作製する」ことは、とてもむずかしい。やりやすい分野とやりにくい分野がある。

製薬会社に対するiPS細胞の提供は、バイオベンチャーなどにより行われつつある。

つまり、iPS細胞を使って新薬に危険性がないか調べたり、もっと進んで、患者さんの皮膚から取った細胞をiPS細胞に加工して、シャーレの中で病状を示す「モデル」を作り、その細胞に効果のある物質をいろいろ試していく。これは、製薬会社が新薬開発する際に、現実的に作業を加速する。

もっと夢を語れば、iPS細胞をいまはシートにして貼り付けて使っているそうだが(二次元)、患者の細胞からたとえば心臓や肝臓や臓器まるまる作ることも視野に入っている(三次元)。

それはまだ時間がかかる。そして、iPS細胞を安全に効率的に作り、患者の身体に入れてもガン化しないように作るには、まだまだいろいろな試行錯誤が必要だ。

ノーベル賞を受賞した山中教授が「これからまだまだやることがたくさんあります」と言っていたのはこのことで、患者さんからたくさんの問い合わせや期待を受け、すぐには実現しないことを伝えても、10年以内には臨床実験ができるようにと目標を語っている。政府も動かして、ES細胞についても規制を緩くして開発が促進されるようにした。また、特許を外国に押さえられることで日本での治療ができなくなることも懸念して、山中教授は知的財産権の管理にも心を砕いているという。

とても夢のような技術だが、カール・シンダーマンが新版『サイエンティストゲーム』の原書で語っているとおり、バイオテクノロジーはこれからのサイエンスの分野で、医薬、食品などの適用分野で、大きな役割を果たすだろう。山中教授のノーベル賞受賞もその中でのこと。そして、その過去を見ると、クローン羊ドリーの誕生や(短命で安楽死させられた)、山中教授とノーベル賞を分け合ったジョン・ガードン(クローンカエル)などの研究が元になっている。山中教授もどんな発明も過去の他の成果に基づいている。

というようなことがこの本で述べられていることで、題名どおり、iPS細胞は何で何ができるのか門外漢の私でも一応飲み込めた。ホーキング博士のような難病ALSを持つ人だけに関係あるのではなく、糖尿病から高血圧までほとんどどんな病気でも遺伝子治療の可能性があるという。原子爆弾並みに凄い技術だが、使い方を間違えるととんでもないことになりそうだ。

ワトソン・クリックが二重らせんを発見してから、遺伝子工学は止まらない。また、バイオ工学を学んだ人は米国のIT産業にも貢献しているという。日本も負けていられないね。凄い話だ。

広告

コメントは受け付けていません。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。